130万円の壁とは
130万円の壁※とは、社会保険(厚生年金保険・健康保険)の扶養から外れる収入基準を指します。
この基準を超えると、原則として勤務先の社会保険に加入するか、または国民健康保険及び国民年金に加入しなければなりません。
国民健康保険と国民年金に加入した場合、年間の負担額は30万円を超えるため、それを意識した働き控え(就業調整)が起こりやすくなります。
※年収基準の例外
60歳以上または障害者の場合は180万円
19歳以上23歳未満の者(被保険者の配偶者を除く)は150万円
被扶養者認定の考え方が変わりました
就業調整(働き控え)対策の観点から、被扶養者認定の予見可能性を高めるため、労働契約段階で見込まれる収入を用いて被扶養者の認定を行う方式へ変更されました。
年間収入の判定方法
収入要件から再確認
認定対象者の年間収入が次の基準を満たし、かつ所定の件に該当する場合、被扶養者となります。
①収入要件
・年間収入が130万円未満
(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合:180万円未満、19歳以上23歳未満(配偶者を除く)の場合:150万円未満)
②生計維持要件
・同居の場合:被保険者の年間収入の2分の1未満
・別居の場合:被保険者からの援助による収入額より少ないこと
収入の見込額の考え方
令和8年3月31日まで
被扶養者の過去の収入、現時点の収入、将来の収入の見込額を基に、今後1年間の収入の見込額を判定します。
・収入には、残業手当、臨時的な手当等も含みます。
・課税証明書や3か月分の給与明細等で確認
・前年の収入が130万円以上、または3か月平均で108,333円を超えた場合に被扶養者認定を取り消される可能性あり。
令和8年4月1日以降
・雇用契約書、労働条件通知書の内容に基づいて判断
・書類に記載がなく、あらかじめ金額を見込むことができない残業手当、臨時的な手当は一時的な収入変動とみなし年間収入の見込額には含めません。
※ 給与収入以外の収入がある場合の認定方法に変更はありません。
130万円を超えてしまった場合
臨時収入により、結果的に年間収入が130万円以上となった場合でも、社会通念上妥当な範囲内であれば被扶養者の取り扱いに変更はありません。
臨時収入とは、賞与や一時金を指します。ただし、「社会通念上妥当である範囲」について明確な金額基準は公表されていません。
一方で、
・臨時的収入により年間収入が130万円を大きく上回っている
・労働契約内容の賃金が不当に低く記載していたことが判明した
このような場合には、被扶養者に該当しないものとして取り扱われます。
なお、当該臨時収入が一時的な収入変動かどうかの確認のために「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主証明の提出を求めても差し支えないとされています。
書類を準備しましょう
労働条件通知書
年間収入を判定するうえで、労働条件通知書の整備は極めて重要です。
労働基準法15条で第1項では、使用者が労働契約を締結する際、賃金や労働時間などの労働条件を労働者に明示する義務が定められています。小規模事業者では未整備のケースも多く見受けられます、作成していないこと自体が問題となります。この機会に必ず整備しましょう。
労働条件通知書の絶対的記載事項
・契約期間
・更新の有無・基準(有期契約の場合)
・就業場所および従事する業務に関すること
・始業・終業時刻、休憩、休日に関すること
・賃金の決定方法および支払時期に関すること
・退職に関すること
※厚生労働省モデル労働条件通知書のひな形があります
労働条件に変更があった場合
時給、労働時間、労働日数などに変更があった場合は、その都度、労働条件変更通知書を交付しましょう。そのうえで、被扶養者の認定基準を満たしているかの確認が必要です。
基準を満たさなくなった場合は、その事由が生じた日に資格を喪失します。遡って資格喪失となり、国民健康保険・国民年金への加入が必要となるケースもあります。
労働条件通知書等が無い場合
労働条件通知書など、労働契約内容を確認できる書類がない場合は、従来どおり、勤務先が発行した収入証明書や課税(非課税)証明書等により年間収入を判定します。
最後に
年収の壁の変遷
- 106万円の壁: 一定の条件を満たす短時間労働者が社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する義務が生じるラインです。
- 2023年10月: 厚生労働省は、この壁を意識せず働けるよう「年収の壁・支援強化パッケージ」を開始。
- 2025年: 年金制度改正法により、賃金要件(月額8.8万円以上)は撤廃、企業規模要件も段階的に縮小・撤廃される予定。
- 130万円の壁: 扶養から外れ、自身で国民年金・国民健康保険の保険料を負担する基準。
- 2023年10月: 繁忙期などで一時的に収入が130万円を超えても、事業主の証明があれば連続2年まで扶養に入り続けられるようになりました。
- 2026年4月: 労働契約上の年間収入が130万円未満であれば、一時的な残業増でも扶養継続。
「少子高齢化による人口減少」と「社会保険(被用者保険)の適用拡大」は、今後の日本の社会保障政策において切り離せないセットです。年収の壁をめぐる改正は今後も続きます。労働者は将来を見据えた働き方を、事業主は正確な情報提供と制度対応を行うことが重要です。あわせて、助成金の活用も検討するとよいでしょう。

